全国単位日青会会員各聖
全国日蓮宗青年会会長 光岡潮慶
ビハーラ活動担当委員長 近澤岳生
第5回「心といのちの講座」 報告
平成20年12月2日 日蓮宗宗務院4階会議室にて、日蓮宗生命倫理研究会主催による
第5回「心といのちの講座」が開催されました。
講師に「自殺対策に取り組む僧侶の会」会員の吉田尚英師(東京都永壽寺住職)をお迎えして「自殺対策に実際」をテーマに講演していただきました。
講演内容は
【私の自殺問題へのかかわり】
東京都南部宗務所開催によるバザー&フリーマーケットに参加した際に「あしなが育英会」という組織を知り、その中の自殺対策支援活動に興味を持たれ宗派を超えた僧侶による自殺対策に取り組む会を立ち上げました。
【自殺の実態】
日本では10年連続で自殺者が3万人以上という事実を目の当たりにしています。しかし、自殺未遂者はその10倍にも及ぶといわれ1日におよそ1000人が自ら命を絶とうとしているそうです。その影響は一人の自殺者によって深刻な心理的影響を受けるとされる人は5・6人もしくはそれ以上と思われます。よって、日本人の6人に一人は身近な人の自殺によって何らかの心の傷を負うことになります。
【自殺実態白書2008】
自殺に関する資料が約480頁にわたり掲載されており、掲載内容として自殺は自殺率ではなく自殺件数を重視する必要があるとされています。また、自殺件数の多い地域は見方を変えれば「生きる支援」を行なう地域であり、支援の介入が大切で自殺の要因を推測し問題解決に取り組むべきともあります。自殺の原因には様々なことが考えられ、うつ病・家族の不和・負債・生活苦・人間関係・環境の変化・失業・過労などがあり、複合した原因が心を追い詰めてしまうことになっている様です。自殺は、個人的な問題だけではなく、社会的問題でもあり家庭環境や職場環境への対応、経済支援・多重債務者支援・就労支援・復職支援・身体疾患への治療など、様々な分野の専門家の連携が必要となる様です。自殺に至るまでの行動として、相談機関に通っていた人は72%・亡くなる一ヶ月以内に相談された人は62%と高い比率で何らかのサインを発信しており、死にたくて自殺するのではなく死ぬほど苦しく思っているが本当は生きていたいのではないか?が読み取れます。また、自殺者の遺族に対し社会や親族から偏見にさらされることも問題であり、自殺者遺族も4人に1人が自分も死にたいと考えてしまう様です。
【自殺者追悼法要】
自殺者追悼法要を行なっています。同じ体験をした遺族の集いであり、当初は自殺者の死後の手続きや周囲の心無い言葉・親戚から責められる苦しみや故人を責める悔しさなどから心から祈ることができない様でした。しかし、遺族が安心して法要に参加でき心から故人の成仏・往生が祈れる様に工夫している様です。また「いのちの日」として平成13年にいのちの大切さを強調啓蒙するため厚生労働省が、毎年12月1日をいのちの日と制定しました。「いのちの時間」は急いで流れる生活や仕事の時間とは異なり、ゆっくりと人生の内奥に向き合う「こころ」や「いのち」を見つめる時間が大切としてあしなが育英会員の提言により始められました。自殺者追悼法要は平成19年第1回永寿院にて遺族10名・スタッフ15名で行なわれ、平成20年第2回築地本願寺にて遺族150名・スタッフ30名で行なわれました。
【自殺の問い・お坊さんとの往復書簡】
今までに約500通の悩みを抱えている人から届く手紙に対して返事を書いて相談にのるという活動をしています。手紙の相手は、誰でもいいから聞いてほしいこと、家族や職場では言えないことなどの内容で送られて来る様で、自分の悩みを手紙に書くことで整理をすることができるそうです。その手紙を3人一組のチームで文案を練り、返事を出すそうです。
【私たちに何ができるか】
現代は忙しく追いかけられる時代なので速いスピードの中でゆっくり悩んでもいられない、死にたくて死ぬ人はいない、死ぬしかなくなって追い詰められた上での死の選択となってしまうのが現実の様です。むしろ安心して悩めることが大切であり、ゆっくり悩める場所・自分を見つめる時間を私たちが提供できれば良いと思います。相談者は「誰も自分を認めてくれない」、「誰でも良いから聞いてほしかった」などの孤独感から社会への不満・絶望を抱き、それが外へ向うと殺人となり、内に向うと自殺となる様です。周りの悩める人の「声なき声」に耳を傾け、相談者に「褒められて嬉しい」「一緒にいて楽しい」「そばにいてくれてありがたい」といった安心感じてもらい、お互いに認め合う心を持つことが必要だと思いました。
開催要項
日 時:平成20年12月2日(火)13時~
会 場:日蓮宗宗務院(4階第3・4研修室)
講 師:「自殺対策に取り組む僧侶の会」
吉田尚英師(東京都永壽院住職)
演 題:「自殺対策の実際」
対 象:NVN会員(会員以外の聴講も可)
主 催:日蓮宗生命倫理研究会(日生研)
協 賛:日蓮宗ビハーラ・ネットワーク(NVN)